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2022.05.24 「大学-医療連携特別講義」スタート 医師と薬剤師から臨床現場の実践学ぶ

薬学部5年次生対象の「大学―医療連携特別講義」が5月12日から始まり、本学と教育・研究連携協定を結んでいる神戸市立医療センター中央市民病院の医師と薬剤師から臨床現場の実践について学んでいます。

■初回のテーマは「栄養管理」 中央市民病院の医師と薬剤師を招き


8月9日までの4回集中講義で毎回、同病院各診療科の医師と薬剤師を講師に招きます。初回は、「栄養管理」をテーマに伊藤次郎医師(麻酔科副医長)と土肥麻貴子薬剤師(薬剤部主任)から、2人が関わる同病院の「NST(Nutrition Support Team)=栄養サポートチーム」の取り組みを中心に話してもらい、同病院の元薬剤部長でもある橋田亨教授を交えてパネルディスカッションしました。対面とオンラインのハイブリッド方式の授業で、約80人が受講しました。

ディスカッションする伊藤医師(右)と土肥薬剤師

■NST「チーム医療の重要性」 伊藤医師


伊藤医師はまず、「なぜ栄養療法を行うのか」と問いかけました。「入院患者の40%が栄養不良」とされる実態が背景にあることを示し、患者のアウトカム(医療行為が患者にもたらす最終結果)に影響するためという理由を挙げました。栄養不良により、病気の治癒が遅れ、入院期間が延び、医療費も膨らむという問題も指摘しました。

さらに、栄養療法は、①栄養スクリーニング(低栄養状態のリスクの把握)②栄養管理計画の作成③栄養療法の実施(投与)④モニタリング(目標達成率の評価、副作用の評価)⑤管理計画の見直し――と基本プロセスの段階があり、医師、看護師、薬剤師などの専門職からなるNSTで取り組むチーム医療の重要性を強調しました。

また、医療設備や人員配置、教育体制の整備という病院全体として取り組むべきことも示しました。最後に、「私自身は当初は文学部に入りましたが、『ブラックジャックによろしく』などの医療漫画が好きになり、医師を志しました。若い頃の情熱がずっと続くとは限りませんので、チーム医療という視点でモチベーションの維持・向上につなげてもらえれば」と学生に語りかけました。

■「多職種で連携し、カンファレンスで情報共有」土肥薬剤師


一方、土肥薬剤師は、薬剤師になって11年目とのことです。同病院では調剤や薬品管理などを行うセントラル業務、TDM(薬物血中モニタリング)、病棟、チーム医療とさまざまな業務にあたっています。

土肥薬剤師はNST専門療法士の資格を持ち、認定には5年以上の臨床経験と栄養サポート業務の経験、学会参加、40日間の実地修練などの条件があり、最後に試験があると説明してくれました。

同病院では毎週1回、NSTスタッフの「カンファレンス」があり、患者の状態を情報共有しているとの話でした。「下痢で困っているこの患者には、結腸からの栄養投与は増やせないが、止瀉(ししゃ=下痢止め)薬は使えそうだ」などと、普段のやりとりの事例を紹介してもらいました。

栄養投与と言っても、口、鼻や胃、腸、静脈を通してと経路は複数あり、適切な方法を選択しなければなりません。最も難しい中心静脈による栄養投与(TPN)を在宅で継続実施する場合のやりかたを指導するのも薬剤師の仕事だとの説明でした。

最後に「適切な栄養療法はより良い医療のための必須条件。多職種で連携し、私たち薬剤師としてできることはたくさんあります」と話し、学生の意欲を刺激してくれました。

土肥薬剤師の説明に耳を傾ける学生ら

■「コロナの時代でもコミュニケーションが大切」橋田教授


最後に橋田教授が「コロナの時代に直接のコミュニケーションが薄れているのは事実ですが、医療者同士が(意識的に)コミュニケーションする訓練も必要です。患者さんとのコミュニケーションと同様に、皆さんは実習先の指導の先生とのコミュニケーションも大切に」と、学生に心構えを示しました。

橋田教授

■「決めるのは医師なのでは」(学生)「さまざまな職種から 適切な意見」(伊藤医師)


学生からは、「チーム医療の大切さは分かりますが、ディスカッションしても決めるのは医師なのでは」と質問が出ました。伊藤医師は、「医師が決めるというよりは 、さまざまな職種のスペシャリストが適切な意見を出してくれることが多いです。経腸医療なら管理栄養士、点滴なら薬剤師の方が知識量は豊富です」と答えました。

また、「スクリーニングで、チェック項目が人によって評価が異なる場合は、どうすり合わせますか」との質問が出ました。「意見が一致するように、数値化できるものも盛り込みますが、経験を積むと意見が一致するようになります」と、伊藤医師が答えました。

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