2018.10.13 【発表:日髙講師】「BIOJAPAN2018」KGDIの開発について
10月10日から12日までパシフィコ横浜で開催された「BIOJAPAN2018」で、分子設計を担当した本学薬学部の日高興士講師が、「抗菌ジペプチドKGDI」の開発についての展示と口演発表を行いました。
「抗菌ジペプチドKGDI」は、本学が岩手医科大と長岡技術科学大との共同研究により開発。KGDIを載せたソユーズ宇宙船(56S)が 11日、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から打ち上げられる予定でしたが、残念ながら失敗に終わりました。
今後、ISSでの宇宙実験に成功すれば、KGDIがどのように細菌DPPと結合するのかが明らかになり、KGDIの構造最適化が進むことで抗菌効果が強まるだけでなく、将来的には歯周病やその関連疾患、多剤耐性菌の問題を解決する、これまでにない作用機序をもつ抗菌薬の開発に繋がると期待されます。
開発経緯については、以下の通りです。
■開発経緯
1. 新しい作用機序の抗菌薬
現在は薬剤耐性菌の出現を防ぐためにガイドラインに基づいて抗菌薬を適正に使用する対策がとられる。しかし、国際的な人や物資の移動により耐性菌の世界規模の拡大を防ぐことは難しく、これまでに病原性のなかった多剤耐性菌による院内感染のアウトブレイクは増えている。このため、予防や適正使用に加え、既存薬とは異なる作用機序をもつ新しい抗菌薬が必要とされている。
2. 副作用の少ない抗菌薬
細菌がもつDPP7はアミノ酸配列や酵素活性部位の触媒ドメインの分類がヒトのDPP7とは大きく異なる。歯周病菌のDPPを欠損すると菌の増殖が顕著に遅くなることから抗菌薬開発の標的であるが、効果のある化合物は報告がない。よって、細菌DPP7の阻害剤が開発できれば作用機序の新しい、かつ副作用の少ない薬となると期待される。
3. JAXAの宇宙実験への参画
岩手医科大学薬学部の阪本泰光准教授、長岡技術科学大学技学研究院の小笠原渉教授らの研究グループは、既にJAXAと共にPCGの宇宙実験を進めており、これまでに歯周病菌がもつDPP11の立体構造の解明に成功している。彼らは細菌DPP7の一つに天然のジペプチドが結合することを見出しており、そこへ本学薬学部の日高講師らのグループが加わって抗菌ジペプチドKGDIの研究を精力的に進めている。
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※KGDIとは
細菌がもつジペプチジルペプチダーゼ(DPP)と強く結合するように天然ジペプチド構造をもとに改変されたジペプチドの誘導体。神戸学院DPP阻害剤(Kobe Gakuin DPP Inhibitor)の略。